梅と桜を可愛らしく描き、色遣いでも若々しさを演出する、黒留袖の中ではとても可愛らしい一枚です。描かれているのは、梅と桜という、きわめて日本的な花。梅の方が歴史は古く奈良時代から、桜も平安時代になると文学作品に見られるようになり、いずれも日本人が千年以上にわたり愛してきた花です。梅と桜を、枝振りの表情も豊かに描いたり、輪郭として意匠化した中にさらに様々な花を咲かせたりと、華やかに賑々しく描いています。背景に流れる流水文様と、淡い色のぼかしは、そんな花々にまとまり与えつつ、衽から前見頃、そして後ろ身頃へと繋がる流れを生み出します。ぼかしの色の青緑色は、その上に乗るピンクの梅と桜を引き立てますね。梅と桜を丸く可愛らしいタッチで描いていること、明るいピンクを多用していることから、とても明るく、可愛らしい光景です。なお、梅も桜も春の花ではありますが、写実的な描き方ではなく、大胆に意匠化されているものもあるため、季節を問いません。立場上黒留袖をお召しになる場合でも、年代や場面によっては重々しくなり過ぎずに若々しさや可愛らしさも失いたくないもの、そんな黒留袖をお探しの方にお薦めのデザインです。