雪輪がリズミカルに散らされ、その雪輪の周りに色とりどりの花々が描かれた、明るく華やかな黒留袖です。大小取り混ぜてリズム良く散らされた雪輪。雪輪は雪の結晶を丸くかたどった日本古来の文様です。雪の結晶というと冬向きなのではないかと思われる方もいらっしゃいますが、あるまで意匠化された文様であり、特に中に綺麗な古典文様や絵柄を詰めて枠取りのデザインとして使われるものは、季節を問いません。描かれた花は、牡丹、菊、桜、桔梗。牡丹は、中国で唐の時代に百花の長として愛でられており、それが日本に伝わりました。平安時代の着物や室町時代の裂（きれ）にも見られる、古くからの文様です。菊の花は長寿や不老の象徴であり、別名を千代見草といいます。こちらの黒留袖は、春秋の花が描かれていますが、単衣の時期にお召しになれば、菊や秋草が目をひき、夏から秋に相応しい装いと感じてもらえることでしょう。背景にほどこされた朱色からクリーム色へのグラデーションが、より一層優美な雰囲気としてくれますね。多くの人が集まる晴れの席で、遠目にも映える華やかな黒留袖です。