金彩により色紙と雲をバランス良く配した周りに、鶴が飛び、秋草が咲き乱れる、琳派の絵画のような黒留袖です。日本画の中でも、穏やかな雰囲気と、花や鳥を描く作品が多いことから、特に女性からの人気が高い琳派。金泥などの巧みな金銀遣いで、また、燕子花や秋草など楚々とした草花のモチーフが多く見られます。こちらの黒留袖は、そんな琳派の絵画にならうかのように、色紙と雲を金彩で表現し、その周囲には鶴を羽ばたかせ、数々の秋草を咲かせています。鶴は長寿を象徴する吉祥文様として知られていますが、特に空に羽ばたく飛翔鶴は、輝かしい将来を思わせるものとして、縁起が良いとされています。菊や桔梗、萩などの秋草文様は、その繊細で楚々とした様子が古くから愛され、染織品のみならず工芸品にも多く見られる文様です。秋草文様というと真夏を過ぎてからのものかと思われる方もいらっしゃいますが、着物の世界では先取りは良しとされるうえ、秋の風景は暑い季節に目から涼を呼ぶものとして6月頃から用いられるため、単衣の時期であれば月を気にせずにお召しいただけます。金彩の、黄色みの強すぎない色味も、単衣の季節に涼しげですね。優しく楚々とした、日本画のような装いは、多くの方に好印象を持ってもらえることでしょう。