花吹き寄せの光景が賑々しく、熨斗や花車の姿も優雅な、晴れの席に相応しい華やかな黒留袖です。数々の小花が散らされた文様は、花吹き寄せ。吹き寄せとは、元は花や木の葉、木の実が風に吹かれて寄せ集まった光景のことで、秋の風景でしたが、現在では、様々なものを寄せ集めたものとされ、料理や和菓子の名などでも使われる言葉となりました。染織品や工芸品に文様として描かれる場合も、秋の植物に限らず、小ぶりで綺麗なものを集めて描き、吹き寄せとされます。目立たない小さなものであっても、美しさを見つけて愛でる、日本人の心から生まれた文様といえるでしょう。熨斗（のし）は、贈答品の包み紙にも描かれる熨斗鮑（のしあわび）に由来し、元は鮑の身を薄く引き延ばしたものであることから、延寿を象徴する縁起の良い文様。花車は、文字通り、牛車のような車に花々を乗せた、着物や帯の文様として多く用いられる、雅な文様です。こちらは、たっぷりとした絵柄が賑やかで、お祝いの席に相応しい黒留袖ですが、一つ一つの文様が小ぶりなため、目立ちすぎることがなく、華やかさの割にお召しいただきやすいデザインです。晴れの日に相応しい祝祭感あふれる装いです。