「几帳（きちょう）」の文様の前に、大輪の「牡丹（ぼたん）」が凛と咲き、やさしいピンクの地色が、それを引き立てている、シックな訪問着です。几帳は、宮廷文化をイメージさせ、気品をかもし出すモチーフです。そのもの自体も美しく、そこにあるだけで品格が生まれます。大きくふんわりと描かれた牡丹は、白を基調とした色のため、絵柄からやさしく浮き出ています。牡丹は「幸福」や「富貴（ふうき）」の良い意味を持つ文様でもあります。春の花である牡丹のほかに、秋の花であり、長寿を意味する「菊」や、「萩」「もみじ」。早春の花であり、高潔を表す「梅」。それらの、良い意味を持つ四季の草花が、同じ場面に一度に描かれています。そのため、季節を問わず、一年を通して、いつでもお召しいただけます。裾のほうに、波の文様が描かれていることで、几帳とあいまって、海に浮かぶ船にも見てとれるような、面白みがあります。また、波も不屈の精神を表す、良い意味をもつ文様です。柄の1つ1つは書き込まれているのですが、余白が大きく取られているため、シンプルさも感じられ、スタイリッシュなおキモノとなっております。