優しく上品な着物地の色は「蒸栗色(むしくりいろ)」。蒸した栗の皮を向いた実のような、緑みがかった淡い黄色のことです。蒸栗色は炊きあがった栗ごはんの間から顔を出す美味しそうな栗の実の色で、日本の伝統色はさまざまな物に例えて名付けられており、日本ならではの美意識や伝統を感じます。文様は、ぼかしながら描かれ「辻が花」の技法を彷彿させます。特定されることのない抽象的に描かれているものもありますが、よく見ると「桜」が描かれます。桜は、咲き誇る姿から繁栄や豊かさを表しており、また春に咲くことから新しい門出を意味します。小紋などで目にすることの多い辻が花ですが、このようにフォーマルな着物でデザインされると特別感を感じます。優しく落ち着いた色彩に、柔らかく描かれた文様。上品で控えめ、お祝いの席にぴったりの装いです。