日本の原風景が描きこまれた珍しい柄行きの黒留袖です。四季の自然を愛でる日本人らしい感性が漂います。一番奥に見えるのは、豊かな木々が生い茂る山。そのふもとには、茅葺屋根の立派な家屋が建っています。まるで昔話の一場面を思わせる、和やかな景色。庭先に、立派な松の木が並んで、力強く枝を伸ばしている様子も物語のようです。松といえば、繁栄や生命力のシンボル。つぼみ混じりの梅の花を添えることで、一層強い意味合いが込められています。咲き誇る花たちも和のモチーフばかり。椿に菊、桔梗など色々な季節の花が揃い、一生に一度のおめでたい日を寿ぎます。さりげなく水辺の風景も描かれていて、立体感が増すよう。裾には籬があり、こちら側から庭を眺めているような演出になっています。丘の起伏を覆うように咲く花は、一層栄えていく未来を感じさせるようです。