大きな菊の文様と、絵柄の全体にふんわりと長く伸びる「蔓帯(かずらおび）」が美しいおキモノです。鶴は、長寿の象徴でありますが、何羽も描かれることで「千羽鶴」を表し、限りない喜びも意味しています。そんな鶴が、絵柄の上部に、空を舞うように配されることで、おキモノに軽やかさをも加えています。文様化された、長寿を意味する「松」や、丸く淡く描かれた、高潔を表す「梅」、繁栄の象徴である「桜」が、華やかさと、祝賀のその気持ちを盛り上げてくれます。大きな菊の文様の中には、写実的で、延命長寿を表す「菊」も配されていて、良い意味合いをさらに加えるとともに、柄に奥行きを感じさせています。裾にひろがる蔓帯には、小紋柄と、たくさんのお宝が描かれています。蔓帯とは能装束の1つであるため、描かれていることで風雅さが増します。また、そこに描かれる「宝づくし文様」は、富や繁栄、難をのがれるような意味合いを持ち、幸せを祈る文様です。金彩と、金糸での刺しゅうもほどこされて、きらびやかになり、どこまでも幸福と喜びにひたれるおキモノです。