寿ぐ気持ちをふんわり優しい風情の草花文様に託した黒留袖が、桂由美の「花めぐり」です。優美に流れるミルキーウェイのようなホワイトと薄紫色の配置。幅の広い濃紫のリボンにはイスラム風の曼荼羅(まんだら)にも、華紋にも見える文様が半円状に描かれています。ちなみに曼荼羅とは、円を意味するサンスクリット語で生命力を表わします。イスラム風の曼荼羅とは、モスク(イスラムの礼拝堂)の天井ドームなどに描かれている円形の模様のことです。濃紫の幅広リボンは、花更紗文様になっていてイスラムブルーがエキゾチックなニュアンスを添えています。そして花更紗からあふれだすような薔薇と四季折々の草花は、刺繍がほどこされた薔薇を中心に細いリボンで束ねられた花束のようにも見えます。草花もまた、生命力を象徴する吉祥文様です。精彩を放ちながら、圧倒的な数で迫る小花模様の数々。なのに何とも言えないスイートでハートウォームな雰囲気が、装う人の柔らかな心情と物腰を物語っているかのようです。後ろ身ごろには左側に2/3ほど切り出したイスラム風の曼荼羅が置かれ、その周りに咲く花々はまるで天空庭園のようなニュアンスの美しさです。ラグジュアリーな幸福感が漂う柄ゆきのお着物は、あなたを優雅に演出することでしょう。