物語の一節に登場してきそうな、家屋の情景を描いたお着物。御簾の掛かった縁側は桜や紅葉、松の木が茂り、なんとも風情があります。その庭には御所車。そして橋のかかった静かな水辺に浮かぶ水鳥の姿。四季の草花が生い茂る丘からその情景を眺めているような、そんな絵柄です。これはいわゆる“御所解き文”という風景を描いた文様です。江戸時代の中期から後期に、大名の奥方や御殿女中の衣服によく描かれた御所解き文様は、現代の女性にも人気の文様です。情景からさまざまな物語を連想できる“文芸性”が人気の理由でしょうか。こちらのお着物に描かれた情景は穏やかで豊かな印象があります。女性ならではのおおらかさや、ゆったりとした時の流れを感じます。そんな風情のある情景を堪能できる上品な一着。大人の女性にふさわしいお着物と言えるでしょう。