涼をとる目的だけではなく冠婚葬祭など相手に恭順の意を表す「扇」は、風を起こし空気を揺り動かすことから神の魂を招くとされ、冠婚葬祭などに使用する際はお守りとしての意味があるようです。末広がりの形からも縁起の良いものとして用いられています。そんな扇におめでたい花々が華麗に描かれています。百花の王と言われる牡丹は葉っぱを座に花が咲く姿から「美しい女性の座る姿」に例えられています。可愛らしい小さなつぼみから大輪の花を咲かせることから「幸福」や「高貴」を意味しています。国花である「菊」は、天皇や皇室を表す紋章であることは有名ですよね。もちろん国花であるためには深い意味があります。小さなつぼみがパッと丸く咲き、生命の源である太陽を思わせることから、「高貴」「高尚」「高潔」や無病息災、邪気祓いの意味をなしています。そのため最高位の花とされています。そのほか円満を意味する「七宝」、忍耐や美を表す「梅」、葉っぱが色を変えない常盤木と言われる「松」など、贅沢なまでに留袖に描かれています。一つ一つの絵柄の意味を心得るとおめでたい儀にふさわしい留袖とうなずけることでしょう。