どこか懐かしさを感じさせる古典柄が特徴の黒留袖です。モチーフは鶴、ぼたん、梅、松など、おめでたい吉祥のものがデザインされています。まん中から下の方にかけては、ゆったりと枝を伸ばす梅。まるくかわいらしい形の梅の花は、紅白に彩られ、お祝いの気持ちを表現しています。まん中から上の方には扇形の模様がいくつかありますが、これを地紙(じがみ)といいます。地紙の中には鶴やぼたん、菊など、それぞれにちがった吉祥柄が描かれています。鶴の地紙には幾何学模様のような柄があります。これは、紗綾形というもので、卍(まんじ)の字をつなぎ合わせてデザイン化した柄です。この紗綾形は、お着物にはよく使われる伝統的な柄。地紙の中にほんの少し表れるだけでも、品格と存在感が増すように感じられます。また、地紙や飛翔する鶴を明るく照らすように配された金の楕円が遠目に見ても美しいのも、こちらの黒留袖の特徴です。きらびやかではあるけれども、品格を損なわないデザイン性が厳選された黒留袖のゆえんです。