昔の人が、おめでたいな、と感じたもの。それらを総称して「吉祥（きっしょう）文様」と呼びます。まさしく、慶び事のお席にピッタリ。お着物のデザインを考える人によって、どの文様を用いるかが変わってくるので、お着物の柄を隅々までじっくり観察すると、発見があったりしてとても楽しいことです。こちらの黒留袖には、そんな吉祥文様をこれでもかと詰め込みました。しかも、総刺繍！なんて豪華なんでしょう。エレガントでありながらも、重みがあります。表現されているのは、日常生活で使う道具から、植物文様まで、様々です。それぞれに、お祝いの意味合いが込められています。婚礼の場に特にふさわしい文様をご紹介いたしましょう。ピックアップするのは「紐」の文様です。え、ひも？とも思われそうですが、「紐＝結ぶ」という連想から、「人と人、ご縁を結ぶ」という意味があるのです。特に婚礼となると、家族同士が新たな結びつきを育んでいくことになるので、「末永くどうぞよろしくお願いします」という意味も込めることができますね。あえて結ばない紐を描くことで、女性らしいふくよかなラインが生まれ、流れるようなエレガントさが出ます。きっと、見た目の美しさよりも一層、身にまとった時に、よりその美しさを発揮することでしょう。