雅やかな文箱（ふばこ）の文様が美しい黒留袖。文箱は平安時代にやり取りされる和歌や手紙を収める箱でありました。和紙が貴重であった時代大切なものを収める箱に四季折々の花々や風景を描くのはなんとも優美な趣を感じられます。文箱に描かれている絵模様にもいろいろな意味が込められています。金刺繍が美しく施された菊の花。丸い姿から命の源である太陽を思わせることから花の中でも一番くらいの高い花とされています。菊の花は中国古来より薬草として用いられておりお酒に浮かべて飲まれたりしています。無病息災や邪気祓いの意味があるのもうなずけます。流水に浮かぶ菖蒲の花は、可憐で美しいイメージがありますね。菖蒲の葉は古来より解毒作用があるとされ薬草として用いられてきました。魔除けのお守りでもあったようです。お風呂に入れてはいる習慣もそんな意味を込めているのでしょう。常盤木（ときわぎ）と言われる松は長寿の意味があります。松自身の生態からも根を深く広く根付く事から、強く長く生命力があるので納得しますね。古来より松には仙人が住み松の実を食べて暮らすとか。延命長寿の意味はそこからきているのかもしれません。