花々が流れる流水に浮かぶように描かれているのは、冊子（そうし・さっし）と言われる絵柄です。冊子は和紙を糸で綴じた物です。平安時代では美しき和紙を用いて作られた冊子は美術品としても貴重なものでした。冊子自体を着物の文様として描かれるようになったのは江戸時代からのようです。平安時代の雅な憧れや知恵がつくとして好まれていたのでしょう。表紙をきらびやかに描くことで優雅さや富の象徴としても趣を感じられます。冊子の周りには、宝尽くしと言われる絵柄が描かれています。一つ一つにおめでたい意味があるので細かく見てみましょう。如意宝珠（にょいほうらい）「なんでも意のままに願いを叶える宝。密教の法具でもありました」打ち出の小槌「願いを叶えてくれる、敵を打つ」隠れ蓑（かくれみの）隠れ笠（かくれかさ）「危険な事物から身を守る」隠れ笠は男性、隠れ蓑は女性に描かれるようです。金嚢、宝袋「財宝を入れる袋、巾着」宝鍵（ほうやく）「宝の倉庫のカギ」「富の象徴」丁子（ちょうじ）「貴重な薬で、夫婦円満　健康　長寿」巻物「知恵・知識」軍配「勝負の采配を決める」七宝・花輪違い「7つの宝のいみがあり、金・銀・瑠璃・玻璃・蝦蛄（しゃこ）・珊瑚・真珠」分銅「天秤で金の重さを量るのに使用するおもり」富の象徴であったようです。細かく見るとそれぞれの意味が深く思いを込めた日本古来の紋様ですね。