ゴージャスな「徳川絵巻鳳凰」は、晴れやかなお席にふさわしい風格と優雅な趣を演出します。たゆたう河の流れのような流水文様は、鳳凰文様とあわせることで悠久の時の流れに見立てることができます。なぜなら鳳凰は、古代中国で尊ばれた想像上の鳥、瑞鳥(ずいちょう)だからです。雄を鳳(ほう)、雌を凰(おう)と言い、この鳥が世に現れると、名君が出現し天下泰平になると信じられていたからです。その古代中国からの伝来が、格式の高い吉祥文様と鳳凰が言われる所以です。鳳凰紋の周りに置かれた華紋は2種類。エスニックブルーのアクセントが利いた華紋は、8枚の花弁が葵の葉です。ピンクの華紋は桜花のイメージ。流水にはエスニック風の菱型模様が華紋と交互に詰め込まれ、伝統柄の組み合わせでありながら、どことなくエキゾチックなニュアンスを漂わせます。後ろ身ごろは更に華麗なる鳳凰と華紋の組み合わせ。流水文様に詰め込まれた華紋と菱型文様が、きらびやかな元禄文化を彷彿とさせます。元禄文化とは江戸時代の元禄年間(1688-1704)に栄えた文化のこと。時の将軍は、5代綱吉でした。流麗な美しさが際立つ黒留袖「徳川絵巻鳳凰」は、風雅な品格を伝えてくれることでしょう。