ひと目見ておめでたさが伝わる「徳川の美　吉祥慶花」は、装う貴女の風格を物語る高尚な趣の黒留袖です。稲妻をイメージさせる直線が褄下(つました)から斜め下に向かい、上前中央でほぼ直角に曲がります。その稲妻ラインのぼかしの上に松竹梅と源氏香に彩られた霞紋、御所車、葵の葉が温かみのあるオレンジ色で描き込まれています。御所車を彩る花は、高貴な菊。ぽってりした葵の葉にも、菊や梅が描き込まれています。黒地や稲妻ラインの上にはおめでたい地紙文様があちらこちらに置かれ、更におめでたい牡丹や松が詰め込まれています。これだけでも相当豪華な文様なのに、裾近くにも源氏香文様がひそやかに置かれています。後ろ身ごろもまた、御所車を中心に葵の葉、おめでたい松や牡丹の地紙、藤、源氏香、常盤の松が夢のように優雅な美しさを作り出しています。源氏香は、香道で『源氏物語』54帖にちなんで名づけられた組み香の「源氏香」に採択された符号です。5本の太線で表わされる幾何学的な文様から、源氏物語の何帖かを読み取ることができる高尚な奥行きを持っています。「徳川の美　吉祥慶花」は、寿ぎの場であなたを洗練された女性に演出します。