金刺繍でほどこされた菊尽くしが美しい久保耕の黒留袖。京友禅の伝統技術を守り熟練した職人技でしか成しえない難解で機密な染め絵の菊柄が品位あるお着物を表しています。多種多様な刷毛や筆道具を使用し、機械では表せない微妙なメリハリや柔らかさは日本のわびさびや格調ある染色文化の美を生み出しています。人と自然が語り合い名工の心を表現しているのでしょう。歴史に育まれた手縫いや金の加工は時代を超えた美意識ともいえます。伝統ある技術を用い黒留袖に描かれた菊の花は日本の花の中では一番くらいの高い花としても有名です。皇家の紋章（一六葉八重表菊）として目にする機会も多いと思います。身近なパスポートの表紙にも描かれていますね。不老長寿の効ありとされ薬用や食用としても用いられています。また「高貴」「高潔」「高尚」などの意味を持ち慶事でもよく用いられています。さらに「無病息災」「邪気祓い」さまざまな縁起の良い意味があり格調高い花に納得ですね。久保耕（くぼこう）の伝統技法によって描かれた菊の柄の黒留袖は「よきもの」として一段と格式の高さを感じさせてくれます。