格天井紋（ごうてんじょうもん）を背景にし、季節の花々が美しい徳川絵巻の黒留袖。華やかな印象の黒留袖には誇り高いユリの花が一面に描かれています。ユリの花の由来は神ゼウスの妻「ヘラ」の乳がこぼれユリの花になったと言われています。そのためけがれのない純真さや清純、母性の象徴とされています。また美しい女性の歩く姿にも例えられていますね。背景に描かれている格天井紋（ごうてんじょうもん）は、格子状に張った天井を意味します。現在でも神社や仏閣の天井に描かれ重要な空間に用いられています。格式のある部屋の天井に綺麗な絵柄を描くことで格式の高さを表現しました。重厚な雰囲気があるため礼装用の着物や帯によく描かれ用いられています。ともに背景に描かれている流水は、生命にとってかけがえのない物。水は常に流れ腐らず清らかです。その意味を込めて「苦難や災厄をさらりと流す」と言われています。またお浄めや火難除けの意味もあります。平安時代より愛されてきた桜の花は、五穀豊穣の神が宿るとされ「豊かさ」や「新しい門出」を意味しています。祝宴の儀にこの黒留袖は華やかさを一層添えることでしょう。