黒地に浮かぶ白鶴と金の鶴が息をのむほど印象的な「慶祝吉祥」は、シックな大人女性にお勧めする黒留袖です。白鶴には気高い香りの菊と竹、金の鶴には松竹梅のおめでた文様が添えられています。なかでも金の鶴に添えられている草木は、みずみずしい生命力を表現する若松と芳しい香りの白梅です。そんな萌え出る春の濃厚なイメージを引き締めるかのように、枝を伸ばす金銀の松の枝。負けじと、白梅もすっくと枝を重ねます。その背景には若松文様が描き込まれた大きな葉が、深みのある赤紫で描かれています。深みのある赤紫は葡萄色でしょうか。葡萄色と書いて(えびいろ)と読むのは山ブドウの古い名前である葡萄蔓(えびかずら)に由来します。この色は源氏物語第22帖「玉蔓」で光源氏が紫の上に選んだ正月の衣装「紅梅のいと紋浮きたる葡萄染めの御小袿」に使われ、平安貴族がたいそう好んだ色です。雅やかな色彩と大胆な意匠の洒落感が、大人女性にふさわしい品格を演出するお着物です。