流水と蛇籠（じゃかご）を背景に、扇子、松、鴛鴦（おしどり）と春秋の花を描いた、古典的な華やかさのある装いです。蛇籠とは、竹を円筒形に編んだもので、川の岸を護るためなどに置かれたもの。流水と共に描かれることが多く、風情のある文様として着物や帯にもよく描かれる文様です。流水の中を泳ぐのは鴛鴦、「おしどり夫婦」の語源として有名な鳥ですね。膝あたりに散らされた扇は、その中に、松や梅、流水、菊菱といった伝統的な文様が描かれ、風雅な雰囲気をより一層高めます。そして、扇の周りに描かれているのは、菊、萩、藤といった姿かたちの美しい花々。菊と萩の丸くて愛らしい形と、上からぶら下がった藤の揺れるような様子は、その形の対照も、春と秋という反対の季節としても、とても良い組み合わせです。こちらは、少し華やぎも感じさせる赤～朱の色合いですが、落ち着いたトーンのため、お祝いの気持ちを表しながらも、上品に装うことができます。また、金も刺繍などで使用されてはいるものの、分量を抑えているため、一歩引いた控えめな品の良さを感じさせます。祝福の気持ちを表しながらも品良く装いたい、そんな場面にお薦めの装いです。