咲き誇る桜、豊かな水の流れ、そして立派な檜扇(ひおうぎ)。こちらは、京友禅競技大会にて受賞した柄です。納得の大胆な構図が、大変見事ですね。桜は、言わずと知れた日本を代表する花です。誰からも愛される存在であり、桜をテーマにした作品がたくさんあります。それだけ日本人の心に響く花です。お祝いの席に相応しい華やかさだけでなく、「たくさんの人から愛されるように」とのメッセージも、胸を打つ文様です。檜扇は、貴族文化を象徴するお道具の一つで、お雛様も手にしているものです。実際にあおぐものというよりは、儀式などで持つ持ち物ですから、雅な文化への憧れを表すものでしょう。末広の形はもちろんのこと、鮮やかな柄付も特徴の一つです。面白いことに、このお着物では「車輪」が描かれています。これは「御所車」から派生したもので、檜扇と同じく、貴族文化への憧れが生み出した文様です。桜が全面的に描かれているので、時期が限定されるかと悩まれる方もいらっしゃいますが、日本の花なので、そこまで気にされなくてもOK。ベストシーズンは、桜が咲くまでです。華やかな世界を豊かに描き出した黒留袖。お祝いの席に、豊かな時間をもたらしてくれる、最高のお衣装です。