まろやかな地色が上品度をアップしてくれます。柄行は存在感たっぷりですが、和の伝統色をふんだんに使っているため、慎ましやかで格式高い印象です。絵画のモチーフとしてよく使われる楼閣山水文は、礼装や帯にも多い図柄。生い茂る木々たちは豊かさを象徴するとともに、情景にメリハリをつけて絶妙なデザインとなっています。楼閣の周りには、色づき始めた紅葉。淡い茜色が挿し色となって華やぎを添えています。生命力のシンボルとされる松も軽やかな意匠で楽しげ。白い雲が木々の間を流れていたり、葦が茂る水辺に波が漂っていたりと、様々な場所に時の流れを感じさせる演出があります。さりげない柄行に込められた風情に気付くのも着物を装おう楽しみ。和の世界をゆったりと堪能できます。