淡いブルーの地色と、物語の1ページを切り取ったかのような上品な文様を使ったこちらのお着物は、控えめながら華やかさを演出してくれます。扇子の地紙を形どった「扇面」の中には、庭園の様子が垣間見れます。庭園には、垣根や建物、優雅に咲き誇る花々が描かれ、まるで貴族の生活のよう。中世貴族が扇子を常に身につけていたことから、「扇面」は高貴な文様として古くから使われてきました。庭園に咲く「菊」は長寿の意味を持ち、実際にも薬用として使われていたこともあり、おめでたい文様として現代でも着物によく使われます。また裾近くに描かれる「流水」や「波頭」は涼しげに見えるだけでなく、人生を表す吉祥の文様です。「流水」は水の穏やかな流れを表し、平穏な人生がいつまでも続きますようにという意味が込められ、「波頭」はその止まる事なく寄せては返す波の動きから、永遠を意味します。どちらもシックに描かれていますが、幸せな人生への思いがたくさん込められていることが分かります。その他にも四季を表すように「椿」「紅葉」「杜若（かきつばた）」「萩」などそれぞれの季節に咲く花が着物全体に散りばめられています。シックな雰囲気ながら、上品でおめでたい文様を使って華やかに仕上げた色留袖をお楽しみください。