穏やかなピンク色の地の上に、牡丹や菊といった日本らしい花々を描き、西洋的な色彩で幻想的に彩った、和洋折衷の装いです。前身頃に華やかに描かれているのは、富と美しさを象徴する牡丹の花や、長寿と若々しさを象徴する菊の花。そして、それらの花の下には、十二単か几帳でしょうか、美しい染織物がたなびいています。そんな日本的な風景ですが、使われている色味はラベンダーや薄いエメラルドグリーンといった、西洋風のもの。着物における和洋折衷というと、和洋の絵柄を混ぜたり、洋風の絵柄を着物に描いたりということが頭に浮かびますが、こちらの色留袖は、日本らしい絵柄と西洋的な色遣いで和洋を融合させました。パリコレにも参加するデザイナーながら、ローマ法王に博多織の装束を贈ったこともあるという、桂由美ならではのデザインといえるでしょう。帯には、正倉院の宝物にも見られる古典文様ながら、インドや中国の影響を受けているためエキゾチックな雰囲気も持ち合わせた、華紋のものを合わせました。全体の印象としては優しく女性らしい、でもふと目を留めると他にはない雰囲気、そんな装いですので、どのような場面にもお薦めできる一着です。