訪問着とはどんな着物?付下や色留袖との違いとは?|着物ライフスタイル

訪問着とはどんな着物?

「訪問着」は幅広い色柄があり、華やかなものから控えめで繊細なものまで様々です。
そのため、使い道が多岐にわたる「訪問着」を最適に活かすためには、場面に合わせた選び方が欠かせません。
具体的なシーンごとにマナーに反しない選び方のルールを見ていきましょう。

目次

訪問着とはどんな着物:着物専門家が教える訪問着の特徴と魅力解説

 「訪問着」とはどんな着物か、その特徴として、年齢や結婚の有無に関わらず、幅広い年齢層に愛される礼装の和服です。
 「訪問着」の特徴は、背中や脇、衽や襟などの縫い合わせの部分に、絶え間なく広がる模様が施されていることです。
 この模様のことを『絵羽柄(えばがら)』と呼びます。絵柄を染める過程では、縫い合わせの部分で模様がずれないように、白い生地を一度仮仕立てにし、その後染色(せんしょく)や刺繍(ししゅう)が施されます。
 手の込んだ作業ですが、その結果、緻密に計算され、華やかで美しい仕上がりの着物が完成します。

訪問着の歴史と進化:伝統から現代へのアート

 「訪問着」と呼ばれる着物は、和装の中で比較的新しいカテゴリに位置しています。
 誕生は大正時代初期で、具体的には1910年から1920年頃の出来事であり、歴史的に見て約100年ほどの歴史があります。
 それ以前には、「留袖」などの正装用の着物か、「小紋」などの日常着用の着物の二つしか存在していませんでした。
 イメージしやすく例えるなら、洋服においては『ドレスかTシャツしかなかった』と言えるでしょう。
 しかし、大正時代に入ると、日常の着こなしとして洋装を選ぶ人々が増加し、同時に着物を『外出着』として利用する需要も高まりました。
 留袖ほどフォーマルでなく、しかし外出時にもふさわしい着物が求められ、これに応える形で大手呉服店が訪問着を提案しました。
 その名の通り、『人の家を訪れる際にふさわしい着物』として、訪問着は次第に広まっていきました。

「振袖」との微妙な違い:訪問着との対比解説

見分けるポイントは『袂(たもと)の長さ』!
 まず、見た目の違いとして袂の長さが挙げられます。着物の袖の下に垂れる袋状の部分が袂であり、「振袖」は「訪問着」に比べて袂が長く、動くたびに優雅に揺れます。
 袂にはたくさんの模様が描かれることがあり、「振袖」はその豪華絢爛な印象が見て取れます。
 「振袖」は最も格の高い第一礼装であり、それに対して「訪問着」は次いで準礼装~略礼装に位置します。
 したがって、着用するシーンもそれぞれ異なります。
 また、「振袖」は未婚女性専用であるのに対し、「訪問着」は未婚既婚を問わず着用できます。
 「振袖」が未婚女性の華やかな装いとして使用されるのに対し、「訪問着」は幅広い場面での着用が可能で、その使い勝手の良さが特徴です。

「色留袖」との見分け方:訪問着の魅力を探る

見分けるポイントは『肩』!
 「訪問着」と「色留袖」の違いは、まず絵柄の配置にあります。
 「訪問着」は『襟元』『肩』『袖部分』、つまり上半身全体に絵柄が施されていますが、「色留袖」は肩部分には柄がなく、裾部分のみに絵柄が配置されています。
 また、「訪問着」と「色留袖」では着物の格式も異なります。
 「訪問着」は基本的に『準礼装』や『略礼装』として、比較的広い範囲のフォーマルな場面で着用されますが、一方で「色留袖」は『礼装』。主に各種式典や結婚式などの正装の場で使用されます。
 どのような立場で出席するかを考慮して、着物の選択を検討することが重要です。

「付下」との差異:訪問着との違いを詳細解説

見分けるポイントは『絵羽(えば)』!
 「付下(つけさげ)」は、戦時中において「訪問着」の派手な印象を避けるために誕生した着物です。
 当時、『高価なものや贅沢品は慎むべき』との傾向から、金糸や銀糸で飾られた「訪問着」のような派手な外観が禁止され、その代わりに「付下」が作られたと考えられています。
 「付下」は着物の形になる前の反物の段階で模様が付けられるため、「訪問着」のような絵羽模様(えばもよう)は存在しません。
 外見の派手さは「訪問着」に比べると劣りますが、「付下」も「訪問着」同様、外出用の着物であり、帯の結び方によってはフォーマルな場にも適しています。
 また、「付下訪問着」と呼ばれる付下の中には、1~2箇所で絵柄が縫い目でつながっているものもあります。
 これは「訪問着」に近い特徴を持ちつつも、程よい華やかさであるため、「訪問着」ほど堅苦しくなく、優雅な場面にも着用できる特長があります。
 「付け下げ訪問着」は、裾周りにはつながっている柄が入っていますが、胸部や衿に関しては柄がつながっていないものが多く、ここで判断できます。

 ただ、近年では訪問着と付け下げの区別が曖昧になってきており、訪問着と付け下げのどちらを選べばよいか迷われる方もいらっしゃると思います。
 どちらを選ぶかは、あまり厳密ではなくなっており、式典に出席される際のご自身の立場や周囲へ与える印象を考えて着こなしを工夫すると良いでしょう。

訪問着の多彩な用途と着用シーン解説

 「訪問着」は、結婚披露宴やパーティー、お茶会などのイベントでのゲストとしての着用が一般的です。
 また、お宮参り、七五三、卒業式、入学式など、お子さまの特別な行事にも広く適用され、その多様性から重宝される着物といえます。
 主に「袋帯(ふくろおび)」が用いられ、「長襦袢(ながじゅばん)」は「訪問着」の色に調和させ、色物または白色のものが好まれます。
 たとえば、結婚披露宴では白や金銀の帯を合わせて格式高い雰囲気を演出し、入学式では淡い色調の小物で華やかな印象を与えるなど、小物の工夫によって様々な用途に適した着こなしやコーディネートが可能です。

TPOに合わせた訪問着の選び方:着物専門家がアドバイス

 「訪問着」は幅広い色柄があり、華やかなものから控えめで繊細なものまで様々です。
 そのため、使い道が多岐にわたる「訪問着」を最適に活かすためには、場面に合わせた選び方が欠かせません。
 具体的なシーンごとにマナーに反しない選び方のルールを見ていきましょう。

結婚式などフォーマルなシーンでの訪問着コーディネート術

 披露宴や格式高いパーティーなど、フォーマルなシーンでは、大柄で華やかな色柄や金彩が施された上品な「訪問着」が適しています。
 若い方には全体的に柄のある明るい色調が、年齢を重ねた方には裾に多く柄が配された落ち着いた色調の「訪問着」が、年齢にふさわしく素敵です。
 古典柄や吉祥柄もフォーマルな場面で選ばれることがあります。
 一方で、お茶会では、品を感じさせつつも控えめな「訪問着」がおすすめです。
 小さめの古典柄が適していますが、会の趣旨や流派によるところが大きいため、事前に会主に確認することをお勧めします。

七五三など子供主役の行事での訪問着スタイル提案

 入学式や卒業式、七五三など、子供の特別な行事に参加する際は、控えめな色調や柄の「訪問着」が適しています。
 子供が主役の場合、派手すぎない色柄や、礼装らしい小物が好まれます。
 購入を考える際は、季節を問わない柄を選ぶと良いでしょう。
 帯や小物の組み合わせを変えれば、春の入学式と秋の七五三といった異なる行事で同じ「訪問着」を着回すことも可能です。

カジュアルなシーンでも楽しむ訪問着のおしゃれ術

 同窓会やパーティー、観劇などあまり格式ばらないカジュアルなシーンで「訪問着」を楽しむ場合は、明るい色調の柄を選び、個性的で遊び心のある小物を組み合わせて、オシャレを楽しんでみましょう。

入学式や卒業式の訪問着スタイル完全ガイド

 入学式や卒業式では、着物を着用することがおすすめです。いくつか着物の種類がありますが「訪問着」「付け下げ」「色無地」などが一般的です。
 ここでは入学式や卒業式にピッタリの「訪問着」の選び方をご紹介します。

ママの服装におすすめ:印象的な訪問着コーデ

 卒業式・入学式のお祝いの装いは、フォーマルスタイルであっても結婚式に参列するほどの厳格な正装は必要ありません。
 代わりに『準礼装』と呼ばれるスタイルが一般的です。
 着物も一般的に受け入れられています。
 『準礼装』として適切な着物の種類には、「訪問着」「付下げ」「色無地」などがあります。
 最近の卒業式・入学式では、「訪問着」を着用する方が増えています。
 ただし、裏地のない『単衣(ひとえ)』や風通しの良い『絽(ろ)』は夏用の着物であり、入学式には適していませんので注意が必要です。
 また、各学校には独自のドレスコードのようなものが存在する場合があります。
 一部の学校では、黒や紺の服装がママたちの間で黙示的な了解となっていることもあります。
 明確な規定がない場合は自由な選択ができますが、浮いてしまうことを心配する場合は、先輩のママたちに服装について相談すると安心です。

訪問着の選び方:デザインや柄、色のポイント

 着物を選ぶ際には季節や年代にふさわしいものを考慮しましょう。
 春におすすめのカラーは、明るくてやさしい淡い『ピンク』『クリーム』『水色』『薄緑』『薄紫』などのパステルカラーです。
 これらの色合いは春らしさを引き立てます。
 もしパステルカラーが苦手な場合は、帯や帯揚げ・帯締めなどに明るい色を取り入れることで華やかさを演出することもできます。
 春の古典柄としては、『桜』『葵』『牡丹』がおすすめです。
 『桜』は新しい門出を象徴し、卒業式や入学式にぴったりです。
 『葵』は徳川家の家紋としても知られ、葉がハート型で縁起の良い吉祥文様(きっしょうもんよう)です。
 『牡丹』は大輪の花を咲かせる美しいモチーフであり、多くの女性に愛されています。
 以上のポイントを考慮しながら、着物を選ぶと春のイベントにぴったりの装いを楽しむことができます。

派手な色と柄はNG?訪問着のエチケット解説

 最近では、以前と比べて華やかな着物が好まれる傾向にあります。
 ママとしては、周りとの調和を大切にしながら柔らかな雰囲気を演出することが重要です。
 ただし、その中で華やかさを加えた個性的な着物もレトロで素敵です。
 例えば、ピンクを基調とした地色に春秋の花々を描いた「訪問着」は、華やかさを引き立てながらも清楚さも持っている素敵な選択肢です。
 昔は好まれていなかったものでも、時代によって今では「訪問着」として受け入れられています。
 華やかさと清楚さをバランスよく取り入れた「訪問着」は、ママのおしゃれな着こなしに普段とはひと味違った魅力を与えてくれます。
 自分自身の好みや個性を大切にしながら、周囲との調和を考えながら着物を選ぶと、素敵な印象を与えることができます。

半衿の重要性:訪問着コーデにおけるポイント

 『白色の半衿(はんえり)』は、着物の礼装において基本的な要素です。
 礼装をする際には必ず『白色の半衿』を合わせることが一般的です。
 半衿は着物の襟元に取り付ける装飾であり、『白色の半衿』は清潔感や品格を演出するため重要な役割を果たします。
 『白色の半衿』は、様々な着物と組み合わせることができます。
 例えば、「訪問着」や「色無地」や「留袖」の場合でも『白色の半衿』を選ぶことが一般的です。
 柄付きの半衿や特別なデザインの半衿も存在しますが、基本的な礼装では『白色の半衿』が使用されることが多いです。
 『白色の半衿』は清潔で上品な印象を与え、着物の全体のバランスを整える役割も果たしています。
 そのため、礼装の際には『白色の半衿』を選んで正しく合わせることが大切です。
 『白色の半衿』を着物に合わせることで、より格式高く華やかな印象を演出することができます。
 着物の装いをより一層引き立てるために、『白色の半衿』の使用を心掛けましょう。
 もし全体的に模様が寂しいと感じる場合には、『伊達襟(だてえり)』を使用して色を取り入れることで華やかさをプラスすることが上品な方法です。

 伊達襟の色選びのコツ
    訪問着の地色を基準にする
      地色が薄い場合は地色より濃い色を選び、地色が濃い場合は地色より薄い色を選びます。
    訪問着の襟の柄の色を基準にする
      柄の中で最も目立つ色または最も目立たない色に合わせた色を選びます。

色無地の訪問着も素敵:シンプルながら華やかなスタイル

 「色無地」は『紋』の有無によって格式が変わります。
 『紋』のない「色無地」はカジュアルな印象を与えます。
 一方、一つ紋の「色無地」は入学式や卒業式にもふさわしいとされていますが、最近では『紋』に関してはあまり気にされない傾向があります。
 卒業式や入学式での「色無地」の色については、黄色やピンクなど華やかで暖かみのある色を選ぶことがおすすめです。

色留袖でもOK!個性を活かす訪問着コーデ術

 「色留袖」という着物は着物に慣れていない方にとっては「訪問着」との違いがわかりにくいかもしれません。
 「色留袖」の特徴は、上半身に柄がなく、帯下から裾にかけてのみ柄があることです。また、紋の数が多いほど格式が高くなります。
 一つ紋や紋のない比翼仕立てではない「色留袖」であれば、卒業式や入学式などに着用することは可能ですが、一般的な選択肢ではないとされています。
 なぜなら、その着物は格式が高すぎる場合があり、一般的な場にはやや過剰な印象を与える可能性があるからです。

おすすめの髪型:訪問着に似合う上品なスタイル提案

 大人の女性らしい落ち着いた雰囲気の髪型がおすすめです。
 強いカールや派手なカラーは避けましょう。
 大人っぽいまとめ髪や清潔感のあるアップスタイルがぴったりです。
 髪が短い場合でも、顔周りをすっきりとまとめるアレンジがフォーマルな雰囲気に合います。
 もし器用な方であれば、「くるりんぱ」や「三編み」を組み合わせたセルフアレンジも挑戦できます。
 ただし、後れ毛をたくさん残したり、ルーズすぎるまとめ髪など、ゆるいアレンジはカジュアルすぎる印象を与えることがありますので、過度なアレンジは避けましょう。
 髪飾りについては、大振りの花や重ね付けは子どもが主役の卒業式・入学式では避けましょう。
 バレッタやヘアピンを使うのは大丈夫ですが、古風なデザインや上品でさりげないかんざしを選ぶと良いでしょう。
 大人の女性らしい品格と上品さを引き立てる髪型と髪飾りを選ぶことで、より素敵な印象を与えることができます。

卒業式と入学式の訪問着:選び方やポイント解説

 卒業式と入学式では同じ着物でも全く問題ありません。
 しかし、髪型や帯の種類、バッグや髪飾りなどの小物を変えることで、少し違った雰囲気を演出することができます。
 髪型や小物の選び方に工夫を加えることで、卒業式と入学式の雰囲気を変えることができます。
 例えば、髪型を変えるだけでも印象が大きく変わりますし、異なる帯の種類を選ぶことで全体の印象を変えることができます。
 また、レンタルで違う着物を選ぶことで、ガラリと異なる雰囲気で写真に残すことも楽しいでしょう。
 卒業式や入学式は特別な日であり、自分らしいスタイルで思い出に残る写真を残すことができるのは素晴らしいことです。
 自身の好みや個性を取り入れながら、着物や小物を楽しんでみてください。

おすすめ訪問着:季節やシーンに合わせたおしゃれ提案

 卒業式や入学式のママの服装には、一般的にはセレモニースーツやジャケットとワンピースのセットが選ばれます。
 また、着物を選ぶ場合には訪問着がよく使われます。
 ただし、最近では感染症対策のために式典の内容や時間が短縮されていることも多いです。
 ママの服装には春らしいパステルカラーを取り入れることがおすすめです。
 訪問着には『桜』『葵』『牡丹』などの春の古典柄を選ぶと優しい印象を与えることができます。
 華やかで個性的な訪問着を選ぶことで、粋なママのスタイルを演出することもできます。
 レンタルの着物を利用する際には、トータルコーディネートがされているものを選ぶと便利です。
 自分の顔や気分に合った訪問着を選ぶことで、式典に華を添えることができます。
 少し寂しい雰囲気になってしまった式典に、ママの装いが素敵な彩りを加えることができれば、とても素晴らしいですね。
 自分自身の魅力を引き立てるコーディネートを心掛け、式典をより特別な瞬間に演出しましょう。

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